インタビュー記事 2017.7.13

作品に「愛」を持ってマサラ上映を!日本のマサラ伝道師が語る、インド映画への想い。

こんにちは!クロフネ編集部のかわあみです。
みなさん、インド映画観てますか??

近年、日本でのインド映画人気は上がり、シネコンで上映されることもしばしば…! そして、インド映画と言えば!「マサラ上映」です!

本来は、静かな空間のはずの映画館で、「歌う!」「踊る!」「クラッカー!」「紙吹雪!」のマサラ上映。 現在では、全国で開催され、もうメジャーな上映イベントです。

でも、よく考えてみると、マサラ上映って、一体誰が最初に始めたの…? 私たち、イベントがある度「マサラ行こうぜ!」とか言ってるけど…。 「静かに映画を観る」ことが当たり前の日本に、マサラ上映をもちこんでくれた勇者は一体誰なんだ!

会いたいぞ~!!!!!!

マサラ上映の伝道師に聞いてみよう!

というわけで、今日は、日本で初めてマサラ上映を開催した方の取材にやってまいりました!

「マサラ伝道師様…。どんな方なのか、緊張する…!……ん?なんか変わった車が走ってるぞ…。」

絶対あれに乗ってる人だ。

「あ、どうも~!はじめまして、本日取材の方ですか?」

「やっぱりそうだった~!日本のマサラ上映の伝道師、安田英俊さんだ~!

「ちなみに、これは愛車、インドのタクシー『オートリキシャ』です!」

「普通にタイムズに駐車するんだ。」

どうしてインド映画にハマったの?

「安田さん、今日はよろしくお願いします!」

「よろしくおねがいします!まずは、これをどうぞ…。」

「え??」

「これは…!」

「インドの民族衣装だ~!」

「サルワール・カミーズ(通称パンジャビ・ドレス)と言って、インドの若い女性が着用する衣装です。」

「雰囲気出る~!嬉しいです!これを着て、今日はマサラ上映やインドについて勉強させていただきます!」 」

「まずは、安田さんがインド映画にハマった理由を教えてください。」

「20年ほど前の話ですが、当時は映画ともインドとも、全く関係のない仕事をしていました。仕事で終電を逃すことが多かったんですが、そんな時は、オールナイト上映をやっている映画館で、始発まで時間をつぶしていました。でも、僕は映画に全く興味が無かったんで、ずっと寝てました。」

「あ、もともと映画が好きだったわけではないんですか…!」

「そうなんです。終電まで働いた頭で、考えさせられる映画を観るのは辛かったし…。暇つぶしの感覚で、仕事後に映画館に行ってたんですけど、 ある日なぜか突然、いつもの映画館でインド映画『アルナーチャラム ~踊るスーパースター~』(2000)が上映されたんです。」

Film (C) 日本スカイウェイ=アジア映画社 ALL RIGHTS RESERVED.

「ジャケットからして、もう濃い。」

「上映理由はわからないんですけど、おそらく僕とインド映画の運命ですね。この映画が、もう、眠気が吹っ飛ぶくらいめちゃくちゃ面白くて…。コメディあり、歌も踊りもあり、恋愛あり!何なんだこの映画は!?と、衝撃を受けて、その日からもっとインド映画を欲するよるになりました!

「インド映画中毒の第一歩だ~!」

「でも、もっと色んなインド映画を観たかったんですけど、当時は全然映画館で上映してなかったんですよね。」

「そうなんですね。今でこそ、ミニシアターやシネコンでも、上映されているのにな。当時は、インド映画の認知度が低かったんですかね。」

「うーん、認知度自体は『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年)で上がったんですけど…。」

「あ、私もムトゥは観ました!日本でも、ヒットしましたよね!」

「そうそう。日本は、ムトゥの大ヒットをきっかけに、インド映画ブームに乗ろうと、率先して上映しようとする会社も出てきました。だけど…」

「いいじゃないですか!何かあったんですか??」

その当時は、インドは全然きっちりしていなかったんです。

「インド…!しっかりするんだ…!」

「まあ、日本がきっちりしすぎているだけかもしれないんですけど…。当時のインドは、映画の権利関係にものすごく大雑把でした。ある会社が映画の上映権を獲得して、上映しようとしたとき、また別の会社がビデオをリリースする権利を得てしまったんですよ。」

「あらら…。」

「映画館に来るお客さんが減るので、上映会社は、当然怒りますよね。これをきっかけに『インドはいい加減な国だなあ』と業界内で思われるようになってしまったんです。」

「ちょっとしょうがない気もしますね…。」

「こうして、日本でのインド映画のブームは、ムトゥ一本で終わってしまったんです。それが、悔しくて…。なんとかインド映画を上映できないのかなーと調べているうちに、インド映画ファンの団体を見つけました。」

「そんな団体があるんですね!普通だと、そこで諦めちゃうのに、行動力が凄い。」

「そこでは、インド映画を日本に広める活動が行われているんですけど、みんな、とにかく熱心でアツいんですよ……!!インド映画の認知に向けて、劇場に上映をお願いしに行ったり、自腹でチラシを作ったり。自分たちの利益なんて一切考えていません。その姿に胸を打たれて、僕も力になりたいと、心から思ったんです。」

「安田さんもアツいなあ…!本当に、インド映画が大好きで活動されているんですね。」

「インド映画にはまった理由は、確かに、内容が面白かったのもあります。だけど、インド映画のために頑張る人たちに感服して、応援したい気持ちになったのも、理由の一つです。

インド映画を知ってもらうために、日本初のマサラ上映の開催!

「マサラ上映の活動は、ファンの団体に入ってから開始されたんですか?」

「そうですね。インド映画がどうやったら認知されるか、と考えた時に、現地の映画館の話を思い出したんです。インドでは、上映中みんな立ったり叫んだりして、映画を黙って観ることができないんですよ。それを日本でも実行すると、話題になるかな~と思って、メンバーと一緒にマサラ上映を企画しました。」

「日本では、想像できないですもんね~。」

「未知ですよね!なので、なるべくみんなが自然に入りやすいように、クラッカーを鳴らしたり、紙吹雪をまいたり、にぎやかな雰囲気を演出できるものを取り入れました!」

「今現在ある、日本でのマサラ上映のイメージは、ここから発信されたんですね…!日本風にアレンジされたものだったのか~。」

「本場では、全員立ち上がって絶叫ですからね。日本人にはハードルが高いかな、と思って…。」

「確かに、初めての上映スタイルで、それは戸惑いますね…。」

「なので、日本アレンジマサラ上映を、2001年に大阪の映画館『シネフェスタ』(2007年に閉館)で開催しました。作品は『バーシャ!』(2001)です。なんと嬉しいことに満員御礼!大盛り上がりで、そこから徐々に話題になり、全国にマサラ上映が広まっていったんです!

2001年「シネフェスタ」での初マサラ上映の風景

「日本初マサラは、10年以上も前に、大阪から始まったんですね!!知らなかった!」

スーパースター・ラジニカーントさんへの思い

「安田さん、ちょっと気になっていたんですけど。」

「なんでしょう??」

「いろんなグッズに囲まれていますが、この方は一体どなたでしょう…?

「この方は、スーパースター・ラジニカーントさんです!南インド出身の俳優で、熱狂的ファンからはタミル語で『指導者』を意味する『タレイヴァー』とも呼ばれ、老若男女問わず愛される存在です。 公開される作品は全て大ヒットを記録し、昨年7月にリリースされた新作『カバーリ』(2016)は全世界で興行収入60億円を突破しています。」

「おお!詳しい説明ありがとうござ……」

「日本では、1998年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』が単館系の公開ながら大ヒットし、その世代の方々からは一定の知名度を誇っています。また、日本のテレビ番組でカレーが特集されると、ほぼ9割くらいの割合でこの『ムトゥ』の音楽が流れるなど、隠れたところでもラジニ映画の影響は大きくなっています!!!!!」

「情報量が!とりあえず、落ち着いてください!」

「ラジニさんへの愛が強くて…。とにかく、ラジニさんは南インドではみんなのヒーローなんです!子供の頃から、腕にラジニさんの刺青を入れたり、映画が上映されなかったら、自殺したりするファンまでいますからね。

「そ、そんなに…。日本じゃ考えられないですね。」

「彼らは、ラジニさんのことを本当に尊敬しているんです。その理由の1つとして、ラジニさんは、自分で稼いだお金で、町に病院や小学校を建て、社会活動を率先して行っているからです。

「ええ~!」

「しかも、自分は質素な暮らしをしています。私もお家にお邪魔させていただいたことがあるんですが、シンプルな一軒家で、高級車も乗っておられませんでした。」

「え!?家にお邪魔…!?さらっと言いましたけど、めちゃくちゃすごいですね…!」

「ツーショットも撮っていただきました!気取らず、本当に優しい方です。インドの住民が、ラジニさんのことを『聖人』と言うのも、わかります。」

「聖人…!俳優としての人気だけじゃないんだなあ。」

「そしてラジニさんは、もともとの職業は『バスの車掌』だったんです!

「そうなんだ!インドって『親が監督で子供が俳優』とかの例が多いから、ラジニさんも、もともと映画業界にいる家庭なんだと思ってた…!」

「インドにはカースト制度が存在していたので、どうしても、親と同じ職業に就くことが当たり前、という風潮もあります。 そんな中、ラジニさんは、もともとは映画業界とは全く関係のない場所で働いていました。車掌さんは、インドでも、あまり位が高くない職業です。その人が、映画界でスーパースターになったんです!

「ラジニさんは、みんなの夢そのものですね…!」

インドの国民に『こんな生き方があるんだ!』と示したヒーローなんです!すばらしい方なんです…!

「安田さんが今日一のテンションです!いや~、生き方がスーパースター!」

「本場のマサラ上映では、そういったファンの思いが大爆発するんですよ。映画の上映初日は、誰も映画を観ていませんからね!みんな『祝賀』のために来ていますから。声援で音も聞こえないし、みんな立つのでスクリーンもほぼ見えません。

「笑う。」

本場と日本のマサラ上映の違い

「本場のマサラ上映は、俳優に対する圧倒的なリスペクトの上で成り立っているんですね。」

「そうですね!最近、有難いことにマサラ上映は有名になってきて、全国で開催されています。だけど、2つに分かれているんです。

「2つ?どういうことでしょう?」

「1つは、『インド映画を盛り上げるため、新しい人を取り込んで、楽しいと感じてほしくて開催する』マサラ上映。これが、私たちの思いでもあります。 もう1つは、『お客さんが増えるから、とにかくなんでもマサラ上映にしちゃえ!』という劇場主催のマサラ上映です。

「なるほど~…。」

「マサラ上映を企画として使っていただくのは、とても嬉しいんです。でも、マサラ上映発案者の思いとしては『作品や俳優のリスペクト』が前提にあって、マサラ上映を開催して欲しいですね~。

「さっきの話のように、インドではラジニさんへのリスペクトがありますもんね。」

「そうですね。インド以外の国だと、マサラ上映は、ストレス解消目的や、ライブのような非日常体感として、やるものだと思います。もちろん、それでもいいんです!でも、何回も言いますが、インドのマサラ上映は、俳優や作品への尊敬、愛がたまらなくなって、ついスクリーンに向かって応援しているだけなんです。ストレス解消が目的で、歌って踊る人は誰一人としていません。

「そうだったのか…。」

「敬愛の念が爆発しているだけなんです!そこを抜いて、マサラ上映が『ストレス解消!』『騒ぎたい人集まれ!』のような目的だと、広まってほしくはないなあと思います。インドの人に失礼かなと。

「確かに、色んなマサライベントがあるけど、『騒ぐ』を売りにしてる企画もあるように思いますね~。」

「マサラ上映が流行して、インド映画に興味がない人が、イベントに足を運んでくれるのはすごく嬉しいんですけどね。難しいところです…。」

夢は、インド人も日本人もハッピーに

「色々なお話を聞かせていただきましたが、最後に、安田さんの夢はなんですか?」

「やっぱり、インド映画常設館の設置ですね!!

「おお!常にインド映画が流れる場所…!」

「さらに、インド映画が現地で公開される同日に、日本でも上映できるようにしたいです。日本語字幕は不要です!インド全体で人気の映画であれば、日本に在住するインド人だけで、満席にすることができます!」

「確かに、私がよく行くインド料理屋の店長も、『現地ではもう公開してる映画なのに、なんで日本ではまだ観られないの?』って怒ってましたね。」

「まずは、インド人向けに、字幕が無いバージョンを公開する。その後に、日本語字幕がついたものを上映する!これが一番の理想の形ですね。インド人も、映画がタイムリーに観られて嬉しいし、日本人も、映画館でたくさんインド映画が観られます。両者ハッピーです!」

「日本では、劇場未公開のインド映画も多いですもんね。」

「この夢をかなえるには、まずは日本でインド映画ファンを、もっと増やさないと!今後も、少しずつインド映画のマサラ上映イベントを企画していこうと思うので、応援よろしくお願いします!」

「今日は、インド映画ファンの情熱や、マサラ上映に対する熱い思いを知ることができました! 安田さん、ありがとうございました!」

愛を叫ぼう

どんなことでも、認知度が高まり、情報が広がれば広がるほど、もともとの根底にある思いは薄れてしまうものかもしれません。 今や、全国でインド映画問わず、様々なジャンルの映画で行われているマサラ上映。 マサラ上映から派生して、応援上映や発声可能上映などのイベントもあります。

どんな上映スタイルだって、根底に「この作品が大好きで、もっと盛り上げたい!」「みんなに届けたい!」という思いがあれば、「All is well」(きっとうまくいく、大丈夫)なんだな、と思いました。

本場のインドに負けないくらい!
作品や、出演者への「愛」を持って、マサラ上映イベントに挑みましょう!

他にも、インドやインド映画業界について、たくさん面白いお話が伺えました。 また、別記事で書かせていただきたいと思います!

安田さん、本当にありがとうございました!

最後には、ちゃっかりオートリキシャに乗せていただきました。風をビュンビュン切りまくって、爽快!「インドではこの車に10人くらい乗ってますよ~。」とのことでした。インドミラクル…。

宝塚歌劇&ボリウッド、夢のコラボ!

「この夏、梅田芸術劇場メインホールで、宝塚歌劇団による、ボリウッド映画『オーム・シャンティ・オーム 恋する輪廻』の公演が決定しました!! なんと、歌って踊って舞台を観る「マサラ・ナイト」が、実現!!企画には、安田さんも関わっています!

「映画だけではなく、舞台でも、劇場一体となって盛り上がってもらえれば嬉しいです!この作品は、とても華やかでダンスシーンも盛りだくさんなので、絶対楽しいですよ~!」

『オーム・シャンティ・オーム 恋する輪廻』


日時:7月22日(土)~8月7日(月)
場所:梅田芸術劇場メインホール
公式HP:http://www.umegei.com/om-shanti-om/

イベント情報

安田さんが主宰しているラジニカーントファンクラブ『ラジニ★jp』
Twitterで、マサラ上映のイベント情報やラジニさんの情報が更新されています!

 

(おわり)


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