イベントレポート 2017.4.5

「『語り』を通じて、震災の記憶にふれる」みちのくがたり映画祭レポート~小森はるか+瀬尾夏美編~ 



 東北に暮らす人々の“語り”に耳を傾けながら、記録し続ける映画監督・作家たちの作品を紹介する「みちのくがたり映画祭」が、大阪市の江之子島にあるFLAG STUDIOで開催された。(2017年3月2日~4日)

 みちのくがたり映画祭のテーマは「『語り』を通じて、震災の記憶にふれる」である。3月4日の最終日には「波のした、土のうえ」の小森はるかさん、瀬尾夏美さん、「なみのこえ 気仙沼編」の酒井耕さんによる、テーマに沿ったトークが行われた。

 今回は、小森はるかさん、瀬尾夏美さんのお話しを、まとめている。

小森はるか+瀬尾夏美 こもり・はるか+せお・なつみ

映像作家の小森と画家で作家の瀬尾によるアートユニット。2012 年より大津波のあとの陸前高田市に暮らしながら、風景と人びとのことばの記録を軸に制作を始める。2015 年からは仙台市在住。現在は、展覧会「波のした、土のうえ」「遠い火|山の終戦」を全国各地に巡回中。

「波のした、土のうえ」



(2014年/映像作品/カラー/67分)

出演:阿部裕美、鈴木正春、紺野勝代、瀬尾夏美

 津波を受けた沿岸のまち、「陸前高田」。このまちに暮らしていた人びとと小森瀬尾の協同制作による映像作品。被写体となる地元住民の方に繰り返しお話を伺い、瀬尾が物語に起こす。出来た物語をご本人にお渡しし、ご本人が訂正や調整、書き換えを行いながら朗読をし、声を編んでいく。そうして編まれた声と、このまちの風景を重ねるように、小森が映像を編集した。


 東日本大震災の後に、被災地では何が起きているのかを体感的にわかりたいと思い、ボランティア活動に向かった小森さんと瀬尾さん。「津波に流された風景を目の当たりにし、被災された方にとにかくたくさんの話を聞かせてもらいました。それをなんとか“そのまま”誰かに伝えたいと思いました」と瀬尾さんは話す。

 彼女たちは、1年間東北と東京を行き来したのち、まちの日々の変化をより感じ取られるようにと、2012年4月に、岩手県陸前高田市に拠点を移す。まちの人と過ごす時間が多くなり、それぞれのより深い感情や、今思っていることを聞かせてもらえる機会が増えたという。最初の滞在から一貫して行っていた“風景と人びとのことばの記録”をテーマにした制作を、その頃からは、より本格的に取り組めるようになった。

 震災から3年ほど経って盛んになった陸前高田市の復興工事が、彼女たちが『波のした、土のうえ』を作るきっかけとなった。復興工事では、津波で荒れた土地を整備し、土を積んで土地をかさ上げする。住宅跡や道すじなど、かろうじてかつてのまちの痕跡が残っていた地面が土で埋められてしまうのだ。人々はこの工事を「2度目の喪失」と呼んだ。2人は「まちの人は、かつて自分たちが住んだまちを想起させるものすらも失おうとしていました。そのタイミングの、人々の感情や生活は語りづらいし、残りにくいように思えた。だからなんとか形にしたいと思ったんです」と語る。


 「例えば、まちの人に、亡くなっていった人のことや今はない風景のことを話してもらうことがありました。彼らがどうしても話さなければならないと思って話してくれたことは、何かすごく大切なものだと思ったんです。これを、なんとか誰かに渡せないかなと思いました。」

 「ある時、民話語りのおじいさんが、聞く・語るという関係は根本的にしあわせなことだって教えてくれたんです。話を聞くっていうことは、語ってもらっているということで、話を語れるというのは、聞いてもらっているということ。そう考えたら、私が聞かせてもらったことをどうするのかって、わかったような気がしました。」

 「話してもらったことを記憶のなかから振り返り、何度も咀嚼して、自分の身体で語りなおすように書いていきます。」と、瀬尾さん。

 小森さんは「聞いたお話をそのまま全部伝えたいとは思っていません。風景や人の姿が語ることもたくさんあります。お話のそばにあったものも一緒に残しておきたいです。鑑賞者それぞれに想起するものがあるような、撮影や編集をしたいと考えています。」と話す。



 「会話というものを考えた時、そこに現れることばは、その時の状況や、私との関係性の中で産まれたものです。だから、確かに相手が言ったことばでも、全てがその人の責任になってしまうのが怖いと感じていました。例えば、私の相づちの打ち方や表情の作り方によっても、相手が選ぶことばは違ってきます。会話のなかで編まれることばを、相手と私の間に置きなおして、あなたのものでも私のものでもないものに昇華していく。一人称語りの形に語りなおすことで、誰でもが“私”になりうるようなことばになっていくのではと考えています。」と瀬尾さん。



小森はるか+瀬尾夏美 個展
巡回展「波のした、土のうえ」in新潟
会期:2017年4月29日(土)~5月21日(日)
会場:砂丘館ギャラリー(蔵)

小森はるかさん・瀬尾夏美さん webサイト
http://komori-seo.main.jp/


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