インタビュー記事 2018.10.20

「映画館は、暗闇の中で自分と対面する場所」 『スティルライフオブメモリーズ』矢崎仁司監督インタビュー

『三月のライオン』等で知られる矢崎仁司監督の最新作『STILL LIFE OF MEMORIES(スティルライフオブメモリーズ)』が11/3(土)〜シネ・ヌーヴォ(大阪)、11/17(土)〜元町映画館(兵庫)、出町座(京都)で公開されます。

安藤政信さんが演じる主人公・春馬は新進気鋭の若手写真家。彼の写真展を見た女性からある撮影を依頼され、次第にその撮影にのめり込んでいく。その依頼とは、自分の性器を撮ってほしいというもの。

女性器を様々なアングルからクローズアップで2000枚も撮影したことで知られているフランスの画家・写真家アンリ・マッケローニと自らを撮らせ続けた彼の愛人が過ごした2年間に触発されて企画されたという、この日本映画史上初のスキャンダラスな作品。

今回は、大阪・シネヌーヴォさんにお邪魔し、来阪キャンペーン中の矢崎仁司監督&伊藤彰彦プロデューサーにお話を伺いました。

『スティルライフオブメモリーズ』製作のきっかけ

実は取材前から作品の存在は気になっておりました。観る前は何も情報を入れていなかったので、女性性器を撮り続けた写真家のドキュメンタリーなのかなって思っていました。そこを完全に裏切られたわけですが(笑)、まずこういった作品を劇映画として完成させるまでには、恐らく想像もつかないご苦労があったと思います。まずそこに心底感動いたしました。

ありがとうございます。

そもそもなんですが、なぜこのような映画を企画・製作されようと思ったのか、きっかけから教えて頂けますでしょうか?

原作として四方田犬彦さんの「映像要理」という本がありまして、これは、女性性器というのは今まで古来、洞窟絵画からピカソまでどういう風に捉えられてきたのか?という事や、男の人が女の人を撮る関係性の問題、ジェンダーの問題、写真とは何かという事について書かれた哲学的なエッセイなんですよ。

なるほど。

その中に出てくる、アンリ・マッケローニの写真集であったり、古屋の中を覗くと全裸の女の人が股を広げて横たわっているというマルセル・デュシャンの遺作であったり、そういった事について矢崎監督が興味を惹かれて受け取ったイメージを今回映像化したというか、ストーリーではなくて、矢崎監督が本当に撮りたいと思った絵を並べて作ったような映画なんです。

(c)Plasir/Film Bandit

そうだったんですね!こういった女性性器というテーマについて、監督はもともと興味をお持ちだったのでしょうか?

そうですね。実は私のデビュー作である『風たちの午後』の主演を演じてくださった綾せつ子さんが試写に来てくださって、「矢崎さん、遂にやりたい事やったね。」って言ってくれたんです。実はこの『風たちの午後』を撮り終えた後に女性性器をめぐるテーマで映画を撮りたいって、綾さんに言っていたらしいんですね、どうやら(笑)。

すっかり、監督ご自身もお忘れになっていたんですね(笑)

でも、それを綾さんから聞かされて、ああそいいう事だったのかと。僕の中にも昔からそういう想いはあったんだなあって思いましたね。

上映に向けての障壁―映倫とのせめぎ合い

しかし、やはり女性性器が映し出されているという事で、上映にあたっては、相当なご苦労があったかと思います。

そうですね。今の時代は、インターネットに繋げばアダルト的なものは簡単に見られてしまう時代だと思うのですが、やはり既存の雑誌・書籍や演劇・映画等の媒体に関しては、たとえそれが芸術的なものであったとしても、数年前より今の方がむしろ規制は厳しくなっているという感じはしていますね。

今回、映倫さんから、R―18指定&モザイク入れの指示等があったと伺っています。

そうですね。映倫さんで、不思議だったのは、「男性性器はOKだけど、女性性器はダメ」。なぜかと聞くと、「女性性器を見ると、何か良からぬ気持ちを起こしてしまう」とか。「皆、そこから生まれてきて、大事なものじゃないですか」と言っても、「いやダメだ」と言われてしまう。

ある意味、ものすごい差別ですね。

また、ラストに流れる中村早(さき)さんが撮影してくださった女性性器の写真、これは1人のモデルの方のものを撮影したものだったのですが、映倫さんからはなぜか「3人のものではないか?」と言われました。

そんな事がわかるんですね、映倫さんは(笑)。

本当は1人の方のものなのに(笑)。ともかく色々難しい問題はありまして、今回はR-18指定でモザイクも入った形での上映となっております。

でも、いつかこの作品がきちんと映倫さんを通じて、ノーカットで観られる時代が来ると良いですよね。

この映画を観た観客は何を想うのか?

肝心の映画の中身についてお話しさせてください。僕、実は初めてこの映画を観た時に、正直ストーリーがイマイチ理解が出来なかったんです。なんというか、なんとも表現出来ない。これは監督に何も聞ける事がないぞ、ヤバいって思ったんです。自分の映画リテラシーの低さにも正直落ち込みました。

(c)Plasir/Film Bandit

でも、2回目観た時は、全然違う気持ちで観る事が出来たんです。1回目は特にこの怜がなぜ春馬に自分の性器を撮影させているのか?っていう事が理解できなくてついていけなかったのですが、2回目はそれを考える事を楽しんだというか、そんな感じでした。

そう言ってくださるのは、嬉しいですね。

もしかしたら、この怜は過去の男性との恋愛で辛い想いをしていて…とかどんどん勝手に想像を膨らましていって…でもって、また3回目観た時は、また全く違う感じ方をしました。

3回も見てくださったんですね(笑)!

3回目はそのなぜ性器の写真を撮らせているの?という事すら全く気にならなくなって、それよりも、この映画は「生」「死」であったりとか、「興味を持つ」「興味を失う」とか、物事の始まりだけでなく終わり=世の無常観が描かれている、むしろそっちの方が大きいテーマなんじゃないかなあと。本当に見れば見るほど新しい発見がある映画ですよね。

それは、嬉しい感想ですね。

いや〜、でもやっと3回目で、そういう事を考えられるようになったんです(笑)。

普通の人は5回目ぐらいですよ(笑)。安藤政信さんも最初の試写が終わった時に、「これって映画というか、枯山水の庭を見ているようですね」って表現してくださったんです。なぜですか?って聞いたら、「庭って何も語ってくれないじゃないですか。でも庭には自分の心が映るでしょう」と。つまり自分の心境で庭が全く違った見え方をすると。だからお客さんとこの映画の関係性はそんな感じなのではないかと。

(c)Plasir/Film Bandit

多分、映画館の暗闇にきて、物語だけを追って帰られる人って多いと思いますけど、それは美術館に行って絵画をみず、キャプション読んで帰る人たちみたいな、なんか勿体無いなあって思うんですよ。映画館ってもっともっと、もしかしたら何も映ってないかもしれないぐらい、きっとそこは、自分と対面する場所だと思うんですよね。「物語を理解して、わかった。」という事で終わってしまうのは、映画の楽しみ方のほんの一部でしかないのに。その一部だけで映画を見ている方が多いので、たまにはこういう映画を観て、こう脳味噌の普段使わない部分を使ってもらいたいなあと。

確かに、脳味噌の普段使ってない部分を使って、筋肉痛になった感じはありました(笑)。

やっぱりシネコンでやっているような映画の多くは、どこかに意味があって、どこかに連れて行ってくれる、ジェットコースターに乗るような感じがあると思うんですけれども、そうじゃなくて、たまにはキャプションを読まなくて絵を見るように、そんな感じで映画を観る体験が出来るっていうのも良いのかなと。

この映画を観る観客さんには、ぜひそんな体験をして頂きたいものですね!

『スティルライフオブメモリーズ』いよいよ関西公開!

という事で、映画『スティルライフオブメモリーズ』は観れば観るほど、自分に向き合って新たな発見がある映画です!

一度と言わず、何度も観てお互いに感想を語り合おうではありませんか!

関西では11/3(土)〜シネ・ヌーヴォ(大阪)、11/17(土)〜元町映画館(兵庫)、出町座(京都)で公開です!

また『スティルライフオブメモリーズ』の公開を記念して、矢崎仁司監督の過去作品『三月のライオン』『無伴奏』『花を摘む少女と虫を殺す少女』等が一挙特集上映されます!

詳細はシネ・ヌーヴォさんの公式HPにて
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/yazakihitoshi2018.html

ぜひ皆さま、劇場へ足をお運びくださいませ!!!

『スティルライフオブメモリーズ』公式HP
http://stilllife-movie.com/



おしまい

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