インタビュー記事 2019.3.15

山をぶっ壊す?トンデモナイ映画を作ってしまったイランの巨匠アミール・ナデリ監督にインタビュー

皆さん、こんにちは。

明日3月16日(土)よりシネ・ヌーヴォ、出町座、3月23日(土)より元町映画館で『山〈モンテ〉』という映画が公開となります。

この映画、実はトンデモナイ映画なんですよ!どうトンデモナイかというと…↓

予告編から雰囲気をお判り頂けたかもしれませんが、『山〈モンテ〉』は超簡単に説明すると、主人公が「うおおお!」と雄叫びを上げながら、山をぶっ壊そうと、ただひたすら山を叩き続ける、そんなぶっ飛んだ映画なんです。

僕はこの映画をはじめて観たとき、密かに心の中でこう叫びました。
「これ作った監督、マジで狂ってるよ…」

この映画を監督したのはイランのアミール・ナデリという監督。 アッバス・キアロスタミ等とともにイラン映画が国際的に脚光をあびるきっかけをつくった、まさに巨匠の中の巨匠。昨年の東京フィルメックス(映画祭)では特集上映が組まれる等、日本との関わりも深い監督さんなんです。

という事で今回は、この監督さんが宣伝キャンペーンで神戸に来られるという事で突撃インタビューして参りました!

↑決して写真のセレクトを間違った訳ではありません。ポスターのようにポージングをしているナデリ監督。実はすごくお茶目な方なんです。

超過酷な山での撮影をどう乗り切った?

今回の映画の舞台は「山」ですが、実は僕もつい先日まで神戸の六甲山という山で初自主映画を撮っていたんですよ(笑)。

そうなのか!じゃあ、君も僕たちの辛さがわかるね。

いや〜、ナデリさんのようなアルプスの険しい山ではなく、車で数十分で行って帰って来られるような場所だったのですが(笑)、それでも撮影は大変でした。

どんな所が?

まず、天気の移り変わりが物凄く早い。ある時山の中で霧が出ていて、物凄く幻想的な景色が広がっていて、「よっしゃ撮影したるで〜!」ってカメラを準備している間に、その霧は瞬く間になくなってしまいました(笑)。

ああ、わかる、わかる!あのね、「山」って言うのはね、「若い女性」のように気分屋なんだよ(笑)。笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜怒哀楽が激しすぎて、撮影するのは本当に大変(笑)。

そんな中でもこの映画『山〈モンテ〉』は非常に雄大な山の映像で満ち溢れていました。どうやったらこんな映像を撮る事が出来るのでしょうか?

山での撮影で一番大事なのは忍耐力なんだ。我々はイタリアのアルプスに4ヶ月間篭って、役者は衣装を身に纏い、まさにずっとそこで生活をしていたんだよ。

4ヶ月間、あの秘境での生活… それは想像を絶する過酷なものだったと思います。水や食料等はどうされていたのでしょうか?

食料は週に一回ヘリコプターで運んでもらって、ああ、そう言えばそこら辺に生えているキノコを食べた事もあったなあ。トイレは岩陰でしたりとか、正直に言えばかなり原始人的な生活に戻って毎日過ごしていただんだよ。それしか選択肢がないような過酷な環境だったからね。

マジすか!それはもう生きるか死ぬかの世界ですね。

とにかくスタッフ・役者共に過酷な山での生活に耐え、撮影も待って待って、その日に山が素晴らしい景色を見せた時にパパッと撮る。1日の中で、カメラを回しても1〜2時間ぐらいだったね。本当に険しいで、移動するのだけでもかなり時間がかかってしまうから。だから、山での撮影はとにかく忍耐する事が大事なんだ。

(c)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

壮絶なラストシーンの撮影で3つの国から起訴された?

また、噂で聞いてしまったのですが、ラストのあの衝撃的なシーンはCGを一切使っていないそうですね(笑)。

そうそうあそこはね、ある時村人たちが総出で宗教行事のためいなくなった時に、今だ!と思って、400発のダイナマイト使って山を爆発させたところを、撮影したんだよ(笑)。

400発のダイナマイト!マジすか!狂ってる…(笑)

しかも爆発させる事を村人達に伝えてなかったから後が大変でね。撮影した山は、イタリア、オーストリア、スイスの3つの国に跨っていたんだけど、その3つの国から起訴されてしまったんだよ、ガハハハハ!

いや〜、ごめんなさい、ナデリさん。それ笑えないですわ(笑)。

でもね、その後逃げるように日本にやってきて、東京の西荻窪で編集頑張って、映画を完成させた後、ワールドプレミア上映をしたヴェネチア国際映画祭で監督・ばんざい!賞を受賞したんだ。そのおかげで3ヶ国が起訴を取り下げてくれたんだよ(ドヤ顔)。

めちゃくちゃカッコいいじゃないですか… つまりあれですね、撮影もそうですけど、撮影が終わった後も作品を完成させて評価を得るまで、忍耐力が大事って事ですね(笑)。

(c)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

「黒澤明監督の精神」で描くとは?

HPやチラシ等のキャッチコピーで、「黒澤明の精神で描く」とあるように、ナデリさんは黒澤明監督が大好きなんだそうですね?

そう。黒澤さんだけでなく、溝口さん、小津さんはとにかくアメイジング。これらの巨匠が作り上げた作品は、日本だけでなく、間違いなく全世界の映画の歴史の中でも究極のマスターピースなんだよ!!!

(ここからいかに黒澤映画・溝口映画・小津映画が優れているか、物凄く熱く語って頂きましたが、詳細を書いてしまうと長くなってしまうので、今回は省かせて頂きます。ナデリさん、ごめんなさい…)

…熱く語って頂きありがとうございます。で、今回は特に黒澤明さんを意識して映画を作られたと。

そう。撮影方法、音の入れ方、役者の動き、それら全て黒澤さんの手法を取り入れたんだ。

特にカメラワークでもそれを凄く感じました。常に望遠レンズを使っていて、人が走る所もレールやジンバルの移動撮影ではなく、三脚のパンでフォローして追っている。そうすると背景が流れてピード感が出るんですよね。まさに「隠し砦の三悪人」の馬上決闘シーンなんかを思い出しました。いや〜、カメラマンさんもメチャクチャうまいですよね。重たい望遠レンズをつけて、あんだけ急激にパンをして、ピタッと止まるなんてカメラワーク、常人じゃ絶対出来ないですよ。僕はあんなカメラワーク、絶対出来ない(笑)。

キャスティングはもちろん重要なんだけど、僕は役者よりもフォーカスプラー(※カメラのフォーカスを送る人。つまり撮影スタッフという事)を重要視するんだ。もし予算が1,000円だったら、200円を役者に払って、800円を撮影スタッフに払う。

この考え方は、とても興味深いです。個人的に正解は無いと思うのですが、なんとなく重要視する優先順位って時代と共に変わって来ていると感じています。昔、小津組で撮影をやっていた大先輩からこう教わった事があるんです。「松本君、撮影所では昔こう言っていたんだよ。【一にホン(脚本)、二に抜け(※つまり撮影)、三に役者、四に演出】ってね。」それを聞いた時、面白いなあって思ったんです。今の邦画は大抵一に役者な感じしますからね(笑)。

もし役者がどんだけ良い芝居をして、良いシーンが撮れたと思ってもフォーカスが甘かったら、やり直さなければいけないでしょ?そんな事をしたら余計にお金がかかってしまうよ。だから撮影クルーというものは映画制作においてとても重要なんだ。

もっと「日本の巨匠が残した作品を見て、学んで欲しい」

日本人として、こうしてナデリさんが日本の昔の巨匠を敬愛して作品を撮られるって言うのは凄く嬉しく感じます。なんだか誇らしい気持ちになってしまいますね(笑)。

とにかく日本っていう国は、世界的に見ても素晴らしい映画財産の宝庫なんだ。黒澤さん、溝口さん、小津さん、木下さん、小林さん、清水さん…アメリカやヨーロッパ世界の様々な所に行ったけど、どの国の人たちも日本の映画を見て、映画制作を学んでいるんだよ。そんな素晴らしい映画遺産が自国にあるのに、なぜ日本の人達は見ようとしないのか。もっと日本の昔の巨匠達が残した作品に目を向けて欲しい。宝物はまさに、ここにあるんだから。

今日、ナデリさんの話を聞いて、もっと日本の巨匠達の作品を見なきゃいけないなって心から反省しました。家に帰ったら、アマゾンプライムで日本の巨匠達の作品観まくります(笑)。

ぜひ!

次回作も期待しています!今日は本当に貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました!

インタビューを終えて

アミール・ナデリ監督、想像してた以上にパワフルな方でした。もうなんと言うんでしょう、喋り出したら止まらない、語気から伝わってくるバイタリティー、映画愛、その全てに圧倒されるような印象でした。まさにこの映画『山(モンテ)』のように。

黒澤明に憧れる人は数多くいると思うのですが、本当に黒澤映画のような壮大なスケール感を持った映画を作ってしまおうと思う、そしてそれが出来てしまう監督って、今時なかなか見当たらないのではないでしょうか。

今回は『CUT』に引き続き3部作の中の2部作目と言う事ですが、最後の3本目の映画は一体どんな感じになるのでしょうか。『山(モンテ)』以上にトンデモナイ作品になるのか、いや〜果たしてこれ以上にトンデモナイ作品なんて出来るのだろうか…(笑)。

と言う事で『山(モンテ)』は明日3月16日(土)よりシネ・ヌーヴォ、出町座、3月23日(土)より元町映画館で公開となります。ぜひ皆さまこのトンデモナイ映画を観に劇場に足をお運びくださいませ!!!

『山(モンテ)』公式HP

http://monte-movie.com/

(c)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

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