インタビュー記事 2019.3.22

『シャルロット すさび』というヤバ過ぎる映画を作ってしまった鬼才・岩名雅記監督にインタビュー!

久々に、超ヤバ過ぎる映画を観てしまった…

ズバリ、その映画は…

『シャルロット すさび』

はじめにチラシや予告編を観て「どうせややこしそうなアート映画なんやろうな〜、しかも170分も越えているんかい。」と思わず躊躇してしまいそうになっていた…ところがどっこい!

いざ観てみると、めちゃくちゃオモロイやないか!

不倫ドラマから始まって、衝撃的なラブシーンの描写を見せられ、福島に行って「うんこ!」を連呼するおばあちゃん(※実は急速に老化した孫娘)が登場したと思ったら、2時間越えた辺りから映画のジャンルが変わって、『キングスマン』的なアクションアドベンチャーが始まり、ラストは『シェイプ・オブ・ウォーター』かよっ!っていう、とにかくもう全く先の読めないぶっ飛びまくった映画で、久々に興奮しまくりの3時間。

いや〜完全に宣伝に騙されたよ… 『シャルロット すさび』は、難解なアート映画なんかじゃない。むしろ極上のエンターテインメント映画やないか!!!

ちなみに今の所、2019年観た映画の中で暫定ナンバーワンです。

いや〜とにかくこの狂った作品を撮ってしまった監督がどんな人か知りて〜よ!
ってな事で実際にお話を伺ってきました。

↑『シャルロット すさび』の岩名雅記監督。なかなかのイケメンです。

↓プロフィール

1945(昭和20)年2月東京生まれ。ソロ舞踏家、舞踊教師、映像作家。 ’69年TBSを依頼退職、‘75年演劇から舞踏世界へ。 ‘88年渡仏、現在まで70カ国/200都市でソロ公演。‘95年フランス南ノルマンディ に拠点をつくり、2004年から映画製作を開始、2007年に公開した初監督作品「朱霊たち」は2009年、英国ポルトベロ国際映画祭で最優秀映画賞を受賞、第二作「夏の家族(2010)」ともどもロッテルダム国際映画祭に公式招待される。2019年にはニコシア市(南キプロス)の「アルタネティブ国際映画祭」で本作品を含む岩名雅記3作品の回顧上映が行われた。「独立映画鍋」会員。舞踏研究所・白踏館主宰。映画製作企画Solitary Body主宰。‘88年以来在仏。

『シャルロット すさび』は、極上のエンターテイメント映画

『シャルロット すさび』拝見させて頂きました。凄まじい映画でしたね。めちゃくちゃ面白かったです!でも、すみません。正直言うと、はじめ観る前は、躊躇していたんですよ。チラシや予告編観て、「どうせ難解なアート映画なんだろう、しかも170分もあるなんてしんどいよ。」って(笑)。

そうでしたか。でも正確には175分です(笑)。

失礼致しました(笑)。冒頭のタイトルバック出るあたりまでは割と想像通りのアート映画かなあって思ったんですが、その後にすぐ不倫ドラマが始まるじゃないですか。あそこから徐々に物語に引き込まれていって、それでラブシーンもあって、あの『カメラを止めるな』にも出演されていた高橋恭子さん、めちゃくちゃ綺麗な女優さんだな〜、セクシーだな〜って完全に釘付けになっていきまして…

そうですか。高橋恭子さんは、観てくださった方から大変人気なんですよ。

それで、その後色々あって、福島に行って「あれ?ちょっと話が変わってきたな」と思ってたら、2時間越えた辺りから映画のジャンルが完全に変わっていきますよね。いきなりサミュエル・L・ジャクソンみたいな人が出てきて、「このボタンを押すと地球上の3分の1は住めなくなる」とか言い出す。あれ、今度は『キングスマン』的な映画になってきたぞ!って(笑)。

あの辺りから、完全に瞬きが出来なくなるような感覚に陥りました(笑)。

あそこからね、お客さんの意見が分かれるんですよ。「もうついていけない」って方もいらっしゃいましたが、意外と大多数の方は食いついてきているんですよね(笑)。

いや、あそこからが良いんですよ。そして衝撃のラストシーン。だからこの映画は、国境やジャンルを飛び越えて色んな所に連れて行ってくれる映画だと思うんですよ。そういう意味で、小難しいアート映画ではなく、エンターテインメント映画なんじゃないかと。少なくとも僕は小難しい事は考えずに、純粋に作品を楽しませてもらいました。

それは嬉しいです。結局、映画って画で出来ているわけじゃないですか。だからシンプルに面白い事が起こらないと、つまらないんだと思うんですよね。

舞踏で培った独自の表現手法を映画にも応用

ただ、奇想天外なストーリー運びではあるんですが、最初から最後まで意味がわからないという映画ではないんですよね。やはり最初にベースとして、カミムラと人妻・朝子との不倫ドラマがある。個人的には、これが効いている気がするんです。はじめから訳のわからない映画は、見る気を無くしてしまいますからね。

あ、それは、同じような事をライターの行川和彦さんも書いてくださったんですよ。「カオティックな映画でパズルのような作りだが、カミムラと人妻の一種の不倫関係を軸に話が進むから“ストーリーの路頭”に迷うことはない」ってね。

本当にその通りだと思います。それで、監督にお伺いしたかったのは、はじめから脚本はこういう形だったのでしょうか?それとも、2時間までは脚本があって、そこから撮影しながら「あっちに行こう、こっちに行こう」って柔軟にストーリーを変えながら撮っていかれたのかなあとか。

いやあ、そんな事はないです。全て最初から脚本の段階でこういうストーリーに仕上げようって思っていて、ほぼその通りに作品は完成しました。

なんと、そうだったんですね!僕は、きっと監督は2時間辺りまで撮られて、「ああ。このまま終わったら面白くないぞ」って思われて、後半めちゃくちゃにしたのかなと思っていました(笑)。

あははは、それはないですよ(笑)。僕自身がそういうタイプの人間というか。私は舞踏家なので、割としっちゃかめっちゃかなパフォーマンスはするんですが、実はパフォーマンスの前半はほとんど静かにしていて動かないんですよ。

なるほど、そうする事で後半の展開がより際立つと。お客さんを楽しませる上で、舞踏での構成・演出手法と同じものを映画にも応用されていたんですね。

実はね、僕は60歳の時に『朱霊たち』という処女作を撮ったのですが、その作品を第七藝術劇場で上映して頂いた時に、当時支配人だった松村厚さん(※本作では宣伝をご担当)から「もう少しお客さん受けするというか、一般受けするような要素があった方が良いですよ。」というような事を言われたんです。僕としては、1本目からエンターテイメントを撮ったつもりだったんですけど(笑)。

松村さん、その事覚えてますか???

そんな事、言ったかなあ(笑)。でも、岩名監督の処女作『朱霊たち』はもっと尖ってましたよ(笑)。

マジすか、この作品より尖っている、って凄い…。観てみたいです(笑)。

「お客さんとの境界線を突破しなければ、表現者ではない」

この映画の中で、もちろんラストシーンは衝撃的なシーンだったんですが、個人的にそれよりも印象に残っているのは、あのシャルロットを助けにいった時に、外人達の組織の部屋に乗り込んでいくじゃないですか、あそこの場面です。さあ、これから決闘シーンが始まるのかなと思いきや、敵の親玉はギターを取り出して演奏をはじめ、カミムラはシンバルを鳴らし始める。そして失禁…(笑)。あそこは腹を抱えて笑い転げてしまいました。

笑う?それは良い事ですね。実はあの悪党のフランス人のおっちゃんは、有名なギタリストなんです(笑)。だからああいう表現やってみようかなと。

そうだったんですね!いや〜あそこは完全に予想を裏切られたというか、今ままでに見たことの無い斬新な表現で、衝撃的でした。あれ、いつかやって見たいなあ〜って思う程、強烈に印象に残りました。

ありがとうございます。実は3作目に『うらぎりひめ』という映画を撮ったぐらい、裏切りは好きなんだけど、正直怖いんですよね。 踊りでもここまでやったら大丈夫だけど、これ以上やったら女性や子供が反発するとか、あるいは主催者が反発するとかあるじゃないですか。

あ、一応その辺りの境界線は念頭に置いて、作品を創られているんですね(笑)。

まあね(笑)。でもその境界線を突破していかないと表現者じゃないじゃですか。だから批判されても仕方がないと思ってやるんですよ。映画も同じ。

境界線を超えた表現という事で言えば、台詞で「うんこ!」を連呼するおばあちゃん(※実は<老化した孫娘>。8歳の孫娘が放射能の影響と311の日に東電の社員?にレイプされて半年で一気に40歳も歳をとったという設定)が出てきますよね。あれには、一体どういった意図が隠されていたのでしょうか(笑)?

いや、あれはね。ウチの息子が四六時中「うんこ!」って言っているから、それを使ったんですよ。

マジすか、それめっちゃ面白いじゃないですか(笑)!

多分、それぐらいの意味かなと思いましたよ(笑)。

松村さん、そのツッコミ(笑)!

ウチの息子は8歳なんですけれども、その息子に「お父さんとお母さん、どっちが好き?」って息子に答えられないようなことを訊くと、息子はどっちにも気兼ねして答えられないじゃないですか。そうすると「うんこ!」って言うんです(笑)。映画のほうでは急速に老化した孫娘が「うんこ!」と言うと、旦那(孫娘にとってはおじいちゃん)は彼女の言うことを全て察していて、普通の言葉で返すというわけなんですけどね。

いやあ、あのじっちゃんと孫娘のコンビネーションは絶妙でした。忘れる事の出来ない面白キャラクターですよね。後半ここにカミムラと朝子とシャルロットが加わって、5人で動くじゃないですか。あのグループショットはたまんなかったですね。ちぐはくのメンバーが寄せ集まって、なんなんだこのワンピース感はと(笑)。とにかく特に後半が何か起こるかわからず、グイグイと引き込まれ、あっという間の3時間を楽しませて頂きました。

気になる次回作について

しかし、これだけ野心的な作品を撮られたと言う事は、きっと次の作品ももう動かれているだろうと察します。差し支えなければ、次の作品はどんな感じにしようと思っていらっしゃるのか教えて頂けませんでしょうか?

実は既に書いてある脚本が10本程あって、その中の4本は既に映画化したんですよ。それでね、個人のテロリストの凄くヤバい本を書いていたんだけれども…

マジすか!それめっちゃ気になる…では、その本を映画化すると。

いや、その本はヤバ過ぎて、僕の手に余るんで、やめておこうと諦めたんです。それで、次に選ばれた脚本が『ニオンのオルゴール』というスイス・レマン湖畔にニオンという美しい街があるんですが、そこで1983年に手紙を入れた瓶が湖に投函されるんですが、それが37年経って東京のとある母子家庭の所に辿り着くっていう話で、まあ話し出すと長くなっちゃんですが…

それも、面白そうじゃないですか!

で、僕はフランスの田舎のノルマンディーって所に住んでいるんですが、そこで撮影があるという事を書いて「シネマプランナーズ」で募集出したら、2〜3日間ぐらいで100人以上集まってしまって、びっくりしました!

役者さん達は、皆シネマプランナーズ見ているんですね、海外ロケがあるって聞いたらなおさら出演したいでしょうね(笑)。

それで、今回撮影を担当してもらうのは根岸憲一さんっていう…

えっ、根岸さんって、あの根岸さんが次撮られるんですか!

※根岸憲一:日本の撮影監督。『地獄の警備員』(黒沢清監督)で撮影監督デビュー。最近では『飢えたライオン』(緒方貴臣監督)や『淵に立つ』等、深田晃司監督作品も多く手がけている事で有名。

そうなんです。池島ゆたか監督の試写会に行ったら、根岸さんがいらっしゃって、私なんかに「是非一緒にやりませんか?」って声かけてくださって、非常に腰の低い方でしたね。

岩名監督の新作で撮影が根岸さん、もうめちゃくちゃ楽しみです。次回作また観られるのを心待ちにしております!本当にありがとうございました!

インタビューを終えて

映画はめちゃくちゃ楽しかったのですが、インタビューする前は、失礼ながら監督に対して若干の恐怖感を抱いていました。「こんな映画を撮ってしまった監督って、ひょっとしてヤバい人なんじゃないか。しっかりコミュニケーションとれるのだろうか」と。

しかし、岩名監督は実際にお会してみると、凄く気さくで物腰が柔らかくて、温かい口調で喋られる癒し系の監督さんでした。「こんな落ち着いた方が、あんな作品を撮られるなんて、凄い…」このギャップにも完全にヤられました。

しかも、御歳74歳…

ちょうど同じ時期に公開されていたクリント・イーストウッドの『運び屋』を観て、「イーストウッド、なんて老けた映画を撮ってしまったんだ」と悲しい気持ちになってしまったが、『シャルロット すさび』には、お年寄り監督が撮った感じは微塵もありません。むしろ若さやエネルギーに満ち溢れている!

ああ、クリント・イーストウッドにこの作品見せたいわ…

と言う事で、すっかり大ファンになってしまったので、これからも岩名監督を応援していきたいと思います!

『シャルロット すさび』は明日3月23日(土)より大阪シネ・ヌーヴォにて公開です。皆さま、ぜひ劇場に足をお運びくださいませ!

『シャルロット すさび』公式HP

おしまい

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